警備員不足による建設会社が自家警備対応の問題

 国土交通省、総務省連名により通知された「交通誘導員の円滑な確保」による建設会社職員による交通誘導員の自家警備対応の検討問題。

 建設会社等による自家警備の実施は、以前より行われていましたが行政が検討を求める動きは異例。

 警備業だけでなく建設業でも人手不足の中、現時点での影響は限定的にも思われます。

 しかし、特に警備員確保の難しい指定路線などにおける検定合格警備員の必要性について、名実ともに認識させることが求められます。
 平成29年6月8日、国土交通省・総務省は連名にて、

 「交通誘導員の円滑な確保について」を通知。

 公共工事における交通誘導員のひっ迫等に伴う、円滑な施工に支障に対して、対応策について検討を促しました。

主な検討内容
・交通誘導員の需給条項の認識共有
 今後の発注見通しを踏まえた、地域ごとの過不足状況に関するきめ細かな把握

・交通誘導員の不足が顕在化又は懸念される場合の対策
 いわゆる自家警備を行う場合の条件整理
 交通誘導員や工事用信号機等の保安施設の配置計画を検討する際に留意すべき情報の共有


 建設業者等による「自家警備」の広まりは、人手不足等の問題が解決した際における「自家警備」のハードルを下げるなど、長期的な影響が懸念されます。

 また、指定路線を含む難しい交通誘導現場における未熟な実施。

 有資格者(検定合格警備員)を必要とする箇所における安価な代替要員による実施。

 状況によって粗悪な交通誘導員の社会的地位の低下。

 警備料金上昇(待遇改善)の足枷など、その影響は計り知れません。


 一方で本通知にあたり、

 国土交通省・総務省は入札契約担当あてに対して公共工事の円滑な施工の観点から
・交通誘導に係る費用の適切な積算
・適切な工期設定や施工時期等の平準化 を求め懸念される価格等の対する影響を限定的となるよう努めています。


 しかし、本通知の大きな問題は、行政が交通誘導員を警備業という法律を縛りを定めながらも、「自家警備」という名目により公な逃げ道を用意したかのように思われてなりません。

 警備業者による交通誘導警備の実施は、

 何よりも警備員の専門性による質の高い交通誘導警備提供と、警備員による交通誘導警備の価値の証明。

 派遣や自社職員ではなく、請負業務として警備業者として責任ある業務提供を実現し、業界としてその役割と必要性を広く浸透させる活動が益々求められます。

 
 現在、交通誘導員不足が深刻化し、人員確保もままらない状況の中です。

 その中で質の高い交通誘導警備の提供。証明できるだけの価値を確保することは、警備業にとって更に難しい大問題です。


 その中で自家警備における交通誘導員と警備業による交通誘導警備員による差別化という視点で考えると、

 単に人材(個々人の人間性や能力)だけを考えず、使用する資機材・服装の向上による印象を含めた業務イメージの向上。

 継続的な現場指導による交通誘導技術やマナーの向上。熱中症をはじめとした安全衛生に関する改善など、改善できる点はいくらでもあります。

 人手不足により警備会社自体が業務に追われる状況であることは十分に理解をしていますが、受注制限を含め無理をしてでも必要な資機材の確保。現場指導等の実施の必要性を理解した行動が、今後の警備業による交通誘導員の価値を認識させるために今求められていることに感じてなりません。


 なお、本「自家警備」に関する問題では、

 警備業や交通誘導員による社会的な影響も大きく、通知内容に対する曖昧な点などもあることから、国土交通省と警察庁は補足通知を出す方針が示されています。

 通知される内容は定かではありませんが、指定路線等における技術面などの指針を示すなど、交通誘導警備員の存在意義が示されることを期待したいものです。


 自家警備について詳しくは、

 警備員の道 > 警備業 > 警備内容の法律上の分類

  > 自家警備とは
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コメント

No title

 お疲れ様です。
 内容の是非はともかく、遅かれ早かれこういう動きが起こるであろう事は予想していました。
隊員の立場からすれば、(特に年度替わりに)毎日の仕事が有るか無いかすら分からぬ現状より、建設業者やその他の業者側に直接雇われる方が、生活の心配も減り有難く思うかも知れません。
 幼稚園・保育園の送迎誘導や、葬祭場の誘導などもそうなりそうな気がします。
 警備業者が、指導教育責任者を講師として派遣する、というような関わり方もあり得るのではないか、とも思っております。
 善い方にも悪い方にも転びそうな案件…今後も要注視ですね。

Re: No title

 猫乃介さん、こんにちは。
 コメントありがとうございます。
 発注側の意識として、警備員のその業務内容を良し悪しを除くと、必要な時に必要な人員を派遣してもらう派遣社員と似たような意識にあるように感じます。
 今回の自家警備が進むと益々派遣感覚が強まり、猫乃介さんのご懸念の通り業者側に直接雇われる方が労働者として生活基盤が安定しそうに感じますね。
 足りない分を警備会社に依頼するという状況がまかり通る。
 現行法では警備業の必要性をあまり感じられない状況が残念な限りです。

 当人である我々がお互いに業界等の動きに合わせ、柔軟に対応していきましょう。
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